販促はマーケティングの一部
今回は、売り上げアップの土台となる「マーケティング」「販促」の基礎を入門編として解説します。
マーケティングとは、市場分析をして消費者の購入動機を考え、商品の企画、販売チャネル(商品を売る場所や経路)選定やプロモーション、キャンペーンといった「売る仕組み」をつくり、実行することです。販促はマーケティングの一部で、自社商品やサービスを顧客に届けるアプローチを指します。市場という大きな枠を捉えて理解してから売る仕組みを考え、顧客に届ける、という流れです。
最近は「ダイレクトマーケティング」という単語を聞くことが増えました。企業はリアルとデジタルの両方から顧客とダイレクトに接点を持とうとしています。そのほうが顧客と強いつながりを持てますし、行動データを分析すれば顧客の心理を把握でき、より顧客のニーズに沿った提案ができるからです。顧客との接点である「コミュニケーションタッチポイント」をどれだけつくれるかが、企業の生き残り戦略の要を握っています。
良質なコミュニケーションタッチポイントをつくる
マーケティング・販促の要は顧客との接点ですから、コミュニケーションタッチポイントを活用して、顧客の購入を促すことが大切です。多くの企業が、チラシ、DM、バナー広告やリスティング広告、SNS、メール、LINEなど、リアルとデジタルの両方を駆使してタッチポイントを作り、マーケティング・販促活動を行っています。
ただ、これだけツールが増えてコミュニケーションタッチポイントが増えていくと、お金の面でも人の面でもコストがかさみ、すべてを活用するのは難しいでしょう。どのタッチポイントを利用すれば反響を得られるかを分析し、選定しなければなりません。
見極めのコツは「全体の」CPA分析
コミュニケーションタッチポイントは、どう選定すればいいのでしょうか。ポイントは「点」ではなく「線」で見ること。流入顧客がその後どういった行動をとるかまで追跡するのです。多くの販促担当者やマーケターは投資金額に対する新規獲得数を分析し、CPA(顧客獲得コスト/顧客一人を獲得するのにかかったコスト)だけで利益を判断しがちですが、それでは一時的な利益しか把握できません。
CPAは新規獲得数だけでなく、リピート数も踏まえてトータルで分析するべきです。新規顧客獲得数が多くても、その後のリピーターがいなければ理想的な結果とはいえません。逆に、新規顧客獲得数は少なくとも、リピート率が高ければ総合的な売り上げは高くなります。
初回購入後も継続購入したかどうかまで調査し、全体のCPAを計測しましょう。リピートを促すには、お客様の声紹介や使い方マニュアルの提供、利用アドバイス・サポートやノベルティ配布などが有効です。
ダイレクトマーケティングで徹底的に効果分析
全体のCPAを計りやすいのが、最初にご紹介したダイレクトマーケティングです。顧客と直接つながるダイレクトマーケティングは、顧客の反応もダイレクトに伝わるのでPDCA(Plan=計画、Do=実行、Check=評価、Action=改善、の4つを繰り返して改善を行うこと)を回しやすいのもメリット。顧客の反応に応じてスピーディーにブラッシュアップを行い、制作や運用に生かすことができます。こまめに費用対効果を把握しながら運用していくのがポイントです。
より正確なCPAを計測するために、ダイレクトマーケティングでは購買履歴や属性に応じて顧客リストを細分化させて施策を行い、効果分析を行いましょう。こうした試行錯誤がリピート率アップにつながります。
アナログな手法ではありますが、顧客に送付するDMは反響の追跡がしやすく、それぞれの顧客の動きを分析できるダイレクトマーケティングの代表格。新規顧客とリピーターに分けて分析したり、1回目購入者と2回目購入者で違うDMを送付したりと多様な展開ができるのも魅力です。DMを送った人とメールを送った人の反響の違いを分析し、アナログとデジタルでCPA比較するのもいいでしょう。
ただ、こうした全体のCPA分析はそれだけ手間がかかるのも事実。専任スタッフを配置したり、部署を設けるなどして継続的に運用できる社内体制を整える必要があります。当然、経営陣の理解も欠かせません。マーケターや販促担当者が経営陣に提案し、無理なく運用できるようにしましょう。
リアルとデジタルの両方で「ブランド体験」を
また、良質なコミュニケーションタッチポイントとは、単なる販促ではなく純粋な顧客とのつながりを生み出す場です。豊かなユーザー体験が提供できる場を用意できると、ブランディングにつながり、より多くのファンを生み出せます。ファンはいわゆるロイヤル顧客。リピーターのさらに上をいくヘビーユーザーともいえる存在で、ブランドに対して好意を抱く貴重な存在です。離脱しにくく、周囲にも口コミで広めてくれるなど拡散力もあります。
豊かなユーザー体験を生み出す場に求められる条件は、ブランドらしさが体験できること。よりリアルな体験をするためには、オンラインだけではなくオフラインで世界観を体験してもらうのが理想的です。体験する機会を創出するために、旗艦店を出すブランドも少なくありません。旗艦店では、インフルエンサーやファンが参加できるパーティーを行ったり、限定のノベルティを配布したりして話題を集め、メディア露出を増やします。
もちろんコストには限りがあるので、オンラインだけの展開でも問題ありません。オンラインでもモバイルアプリやWebサイトを通じてブランドの世界感を表現したり、ユーザー参加型の企画を打つなど工夫すれば、豊かなユーザー体験を提供できるでしょう。
SNSでユーザーと交流し、ファンをつくる
SNSマーケティングはもはや常識。Instagramをはじめとしたソーシャルメディアでの顧客コミュニケーションは、ブランディングや販促にも大きな効果をもたらします。匿名性が高いSNSは、消費者の本音が引き出しやすいのが特徴。生の声がダイレクトに届くSNSは、数値的な反響をつくるだけでなく、コミュニケーションを深め戦略を立てる材料集めとしても活用できます。どんなコメントがあるのか、検索に加えてハッシュタグやツールも利用して拾っていくといいでしょう。
花王「アタック」はTwitter上でアニメ「進撃の巨人」のファン約20万人とコラボし、衣類用液体洗剤「アタック抗菌EXスーパークリアジェル」の限定品を発売しました。ユーザー参加型の「調査兵団公式洗剤開発会議」を実施し、デザインからキャッチコピー、ノベルティまで投票で決め、商品展開したのです。「進撃の巨人」の副題が「Attack on titan」であったことから、「アタック」とのコラボに至りました。
リツイートと「いいね」の数はのべ16万件超と反響は上々。ユーザー参加型の商品企画となり、大きな話題を呼びました。SNSはローコストでユーザーとのコミュニケーションができる貴重な場です。一定数のファンができたらぜひトライしてみてください。
マーケティングと販促の基礎を押さえ、デジタルとリアルの両軸から顧客コミュニケーションを活性化させてブランド力を高めていきましょう。
- 企画・編集:
- NOVEZO編集部
- ライティング:
- 秋カヲリ